立川ANNEX -倉庫×家-

東京, 日本
2階住居スペース。HP面を構成する斜材を中央の大梁が支持し、さらにそれを2本の丸太柱が支える小屋組架構。 斜材と丸太柱により領域を緩やかに分けた一室空間で、長手面の半透明ポリカーボネートを通した柔らかい光が拡がる。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
西側全景。敷地はモノレールが走る大通り沿いから脇道に入った商業と住居の入り混じる地域に位置する。敷地北側に建主が所有するオフィスビル兼本宅(本棟)があり、この建物は1階を倉庫兼スタジオ、2階を住居としたアネックス。RC造の本棟に対して木造家型を採用することで本棟と近隣住宅の間を取りもつ構えとしている。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
キッチンから西側のポリカーボネートを見る。501mmピッチの垂木から小屋束、柱と規則的に間隔が広がりリズミカルな立面を構成。テラスとの185mmのレベル差には、有孔ボードを嵌め給気口とした。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
バルコニーから本棟越しに前面高架を走るモノレールを見る。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
ダイニングからキッチン側を見渡す。天井高は2,600~6,130mm、梁下までの高さは2,360mm。床のタイルやキッチン奥の棚などは建主の自主施工。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
1階倉庫・スタジオ。地盤面より870mm掘り込んだ床高から1,000mmほど基礎を立ち上げ、その上に木架構が載る。外周部の柱は、妻方向を501mmのポリカーボネートパネルによるモデュールで2,004mmピッチに、桁方向は構造用合板のモデュール910mmで1,820mmピッチに配置し、内部には2本の磨き丸太を落とした。天井高は3,527mm。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
1階はスタジオとしても使用できるので用途上開口部を抑え、淡い光に包まれた2階とは異なる明暗のはっきりした空間となる。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
リビングからベッドスペースまで見渡す。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
2階へのアプロ―チとなる築山から見る。幅1,820mmのテラスは、開放的な西面と街とのバッファーとしても機能する。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
半透明ポリカーボネートを通した柔らかい光が内部からこぼれ、暖かみのある家型の外灯として街を照らす。
写真 © TOREAL / Koji Fujii 2020
建築家
森清敏 + 川村奈津子 / MDS
場所
東京, 日本
2021
構造設計
坂田涼太郎構造設計事務所

倉庫と家の間のディテール

 10年ほど前に私たちが設計したアパレルメーカーの本社及びオーナー住宅(以下、本棟)に隣接するアネックスである。用途地域が複数に渡る敷地で、法規制はもとより、構造形式や高さのバリエーションが幾通もあったが、隣の高さ方向に縦に伸びる5階建RC造の本棟とは対照的に、敷地の奥の第一種低層住居専用地域内に広い間口を生かした軽やかな木造建築をつくることとした。木架構を現しとし、1階から2階に伸びる通柱による下部架構と、90mm角の斜材が角度を変えながら母屋を支えHP面をつくる小屋組架構で構成している。この小屋組架構と下部架構の中間に位置する2階床架構により、それぞれ個性的で大らかなワンルーム空間をつくり出している。

 1階は写真スタジオとしても利用される倉庫、2階はオーナーの別宅である。用途上、1階は開口部を抑え、暗い空間に控えめに光が差し込む。対象的に、住居として使用される2階は妻面を全面開口とした明るい空間である。特にファサードである西面を考慮し、頻繁に行き来するモノレールからの視線を遮ることと、西陽対策として高い遮熱断熱性能を備える中空層の厚い半透明のポリカーボネイトを使用した。結果、淡い光に満たされる影のない世界が生まれた。

 支持地盤は現況より1m程のレベルであったので、そのレベルにベタ基礎を設置し、そのまま土間床として利用している。基礎設置の際に掘った土は築山にして2階まで登っていけるようにし、居住フロアを大地と連続させた。半透明ではあるものの全面開口の軽やかな仮設感覚の佇まいは街に開かれる。本棟と戸建住宅群に挟まれるこのアネックスは、用途、スケール、建ち方において、いずれにも類別されない新しい風景を目指した。

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