蓮沼町のアパートメント

東京都板橋区, 日本

形式と脱形式の重なり
東京郊外の中山道から一本路地を入った先の角地に敷地は位置している。周辺では幅の狭い商店街の街路に沿って兼用住宅が稠密に建て込み、駐車場が空地として点在している。良好な住環境とは言い難い周辺なので、敷地内に住民のための空地的な場所をつくりたいと考え、コンパクトなボリュームにまとめて外部空間を確保する方針と、また設計を始めて間も無くしてコロナ禍となったことも併せて共用部のない長屋を検討することにした。
求められた床面積と住戸数から単純な長屋形式は採ることは難しい。そこで4つの住戸を包含し、半地下とした4階建ての2棟を離して配置し、その間を1つの住戸が入る基壇と屋上のブリッジによって繋ぐ構成とした。全て1/2階、3/4階の組み合わせのメゾネット住戸として、入口を2・3階に集約した重層長屋のような形式である。
各住戸へのアプローチは上空が開放された階段状の基壇に上るので、一度住人がその場に集まるが、一方でそこからは各住戸へ独立した入口をもつ。コモンとプライベートが重なったような場所である。階段状の基壇は建築化された外部なので、共用部をもたない厳密な意味での長屋の形式とはいえない。
またズラして配置された分棟的な建ち方の2つのボリュームでは、各住戸が多方向に開口をもつ良好な室内環境が得られる。それらは基壇とブリッジによって繋がっているので、周辺に対しては統合された建築としての構えも併せもち、純粋な分棟ともいえない。
例えば、この建築において上述した基壇のような場をどのように呼べば良いか。空地的であるが、建築化されている。階段の踊り場のようであり、屋上広場にも思える。分棟や長屋といったある種の形式とそれをズラした脱形式を同時に重ねたような建築のあり方による場は、ズラされている訳なので現在において的確な名づけはない。名づけは形式化なので、何ともいい難いその場が制度から解放された建築の萌芽となるのだろう。

建築家
MMAAA / 三木達郎 + 本橋良介
場所
東京都板橋区, 日本
2024

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