ものいう仕口-白山麓で集めた民家のかけら-

「仕口」とは、柱と梁のような方向の異なる部材をつなぎあわせる工法とその部分のことで、日本の伝統木造建築において世界に誇る技術です。大工技術の粋として発展し、風土によって異なる民の住まいにも用いられてきました。 本展では、福井県白山麓にあった築200年以上の古民家で使われた江戸時代の仕口16点を、個々の木組みの図解説と併せ紹介します。一軒の家を支えてきた木片の素朴な美しさに触れながら、先人の優れた大工仕事をひも解きます。

不規則に削られた穴や切れ込みが施された木片。簡素でおおらかなその姿には、原始的な彫刻作品に似た美しさがあります。これらは福井県白山麓の民家で使われていた江戸時代の仕口です。「仕口」とは2本の木材をホゾという突起とホゾ穴で直角または斜めにつなぐ日本の伝統技法及びその部分のことで、地方の民家にもその風土に合ったたくましい仕口の姿がありました。 建築家の瀧下嘉弘氏(1945~)は、昭和40年代から始めた白山麓周辺の古民家移築保存活動の中で、仕口に出会い収集を始めます。普段は隠れている部分が解体によって露わになり、捨てられるはずのこれらに圧倒的な存在感を見出します。瀧下氏は、手作業で刻まれた仕口の痕跡から伝わる名もなき匠の知恵と技に強く惹かれました。 今は主である家を離れ、静かに佇む仕口の数々。しかし、刻まれた仕口の痕跡は、語り部となり、私たちに往時の家の姿を伝えています。 本展では、白山麓にあった200年以上前の民家を支えた江戸時代の仕口一同を紹介します。三者三様の素朴で力強い造形美をご堪能ください。そして今回初めて、それぞれの仕口がどのように木組みされていたのかを伝統技法研究会のメンバーに推測し図解してもらいました。それらを合せて展示します。 仕口の跡に耳を澄ませてみると、精魂込めて木と向きあった先人たちの声が聞こえてくるようです。本展が、一片の仕口から見えてくる民家の構造や大工技術の奥深さに触れる機会となれば幸いです。

日時
2019.12.05, 10:00 - 2020.2.22, 18:00
場所
LIXILギャラリー
中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル LIXIL:GINZA2F
104-0031 東京, 日本
主催
LIXILギャラリー企画委員会
リンク
www.livingculture.lixil

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