写真 © MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
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屋上のランドスケープ

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場所
東京, 日本
2004

なんでもない場所

屋上や河原が好きである。
考え事をしたり、アイディアを錬ったり、特別な誰かとゆっくり話をしたりするのは大抵そんな場所だ。そんな場所には似たような人たちがなんとなく集まる。 空が広いのがいいのだろうか。それとも風景が横長で風が吹き抜けるのがいいのだろうか。もちろんそれもある。しかし、いちばんの理由は、そこが「なんでも無い場所」だからなのだろう。
原理的に都市は、「教室」や「オフィス」や「休息室」にいたるまで、すべて一定の機能がラベリングされた機能空間の高密度集積体である。それはたいへん効 率的で分かり易くはあっても、同時にそのスキのなさは時として息苦しさを感じさせもする。その意味でわれわれ都市生活者は、多かれ少なかれ、都心部にいる ほどに、都市の「外」を求めているのであろう。しかし当然、都心部であればあるほど、「なんでも無い場所」は得難い。

クリエイションの「場」

このプロジェクトでは、そんな「なんでも無い場所」を東京・渋谷の真中に出現させる事を目論んだ。具体的な計画は、渋谷川を見下ろす築40年超の鉄筋コン クリート造校舎の屋上の倉庫を改修して、美容師をはじめさまざまな分野の若いクリエイターが集まるサロン/アートアーカイブをつくることである。クライア ントは住田美容専門学校という、美容師を養成する2年制の専門学校である。
当然、実現すべきは「クリエイターサロン」とラベルの貼られた「機能空間」ではない。機能は集まったクリエイターたちによって、その都度発見されるべきで ある。むしろこの場所の持つ、屋上としての性格や渋谷川の土手/河原としての性格を拡大して、前もって名付けられた機能を持たない、自由なクリエイション の「場」を作り出そうと考えた。

屋上>ランドスケープ

実際のリノベーションの作業から言うと、操作対象である旧ビルの屋上は、不都合な点も多い。
たとえば、倉庫やクーリングタワーや給水塔や使われて いない煙突や絡まりあう設備配管類などの、本来、来訪者から隠し保護しなければならないモノが無秩序に大量に置かれている。また、40年余りを経過し老化 した防水層も、今のところ健康ではあるが、直接多くの人間が歩行するには頼りがない。直線も直角も出ていない東京オリンピック以前の鉄筋コンクリート造建 築物の施工精度の問題もある。
これらの問題群を解決するために、2"×6"のウェスタンレッドシダーでできたタフな木製の面で屋上全体をカバーする事にした。木製の平面は既存の設備類 や老化した防水層を覆い保護しながら、様々な屋上の突出物に沿って、折り曲げられ、切り込みを入れられ、ラフに屋上全体の形にフィットさせられる。
その結果屋上は、ポリゴン分割された牧場のような、一枚の変化のある地続きのランドスケープに置き換えられた。それは「の」の字型にくるりと回転しなが ら、一階高分登っていく一枚の連続する地表面である。不整形な室内部分は「空間」と言うより「谷間」あるいは「洞穴」と言った方が近い。
結果的にわれわれは屋上にランドスケープを設計したのである。
そこは、都心部に唯一残された、名付けられることのない、可能性に満ちた「なんでも無い場所」だ。 渋谷の上空に再現された「屋上の河原」に寝そべって、若きクリエイターは、未来を想像するのである。

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